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不動産購入前の『内見』の完全ガイド:成功につながる準備と確認ポイント


はじめに:内見の重要性とその準備


不動産購入を検討する際、インターネットで気に入った物件を見つけたら、次のステップとして実際に物件を訪問し、自分の目で確かめる「内見」が非常に重要になります。多くの場合、不動産会社が売主との日程調整を行い、内見の機会を設けてくれます。

しかし、せっかくの内見の機会を最大限に活かすためには、単に現地に足を運ぶだけでは不十分です。効果的な内見を行うための準備や知識が必要です。ただ手ぶらで訪問するのではなく、適切な道具と心構えを持って臨むことで、物件の真の価値や生活のしやすさを正確に把握することができます。

本記事では、不動産の内見をより効果的に行うための具体的なコツと準備物、そして見落としがちなチェックポイントについて詳しく解説します。これから物件購入を検討している方々にとって、後悔のない選択をするための貴重な情報となるでしょう。


内見前の準備:必要なアイテムと心構え


必須の持ち物リスト

内見を効率よく行うためには、以下のアイテムを準備しておくことをお勧めします。

 

・頑丈なメジャー(5m程度)

・色違いの付箋(複数物件を見る場合)

・筆記用具(黒以外のカラーペンも含む)

・バインダー(メモを取りやすくするため)

・スマートフォンやカメラ(写真撮影用)

・現在使用している家具のサイズメモ


事前の情報収集

内見の効果を高めるために、訪問前に以下の情報を収集しておきましょう:

 

・物件の詳細な間取り図

・周辺のハザードマップ

・近隣の施設情報(スーパー、病院、公園など)

・公共交通機関のアクセス状況

・日当たりの良い時間帯(可能であれば内見時間の参考に)


『内見』のコツ1:住空間のサイズ感のギャップを正確に把握する


空室の物件では家具が撤去されており、売主が居住中の場合でも購入希望者のために特別に片付けられていることがほとんどです。このため、実際の生活感がない状態で内見することになり、空間の使い勝手を正確に把握するのが難しくなります。

初めて賃貸契約をした際、広く感じていた部屋も、実際に家具を配置してみると予想外に狭く感じた経験はありませんか?人間の目だけでサイズ感を正確に判断するのは非常に困難です。


メジャーを活用した正確なサイズ確認

内見時の必須アイテムとして特におすすめなのが、プロの職人が使用するような5m程度の頑丈なメジャーです。これを使って、リビングや寝室、キッチンなどの主要スペースの実寸を測定しましょう。

さらに効果的な方法として、事前に現在使用している主要な家具(ダイニングテーブル、ソファ、ベッド、テレビ台、冷蔵庫、洗濯機など)のサイズを正確に測り、その数値をメモしておくか、メジャーに目印をつけておくことをお勧めします。これにより、内見中に「このスペースに自分の家具が収まるか」を具体的にイメージできるようになります。

このように実際のサイズを意識しながら複数の物件を内見していくと、徐々に間取り図だけで広さや使い勝手を判断する能力が身につき、物件選びの精度が向上していきます。


『内見』のコツ2:色違いの付箋で写真管理を効率化する


スマートフォンの性能向上により、内見時に多くの写真を撮影する方が増えています。しかし、複数の物件を連続して内見すると、後から「どの写真がどの物件のものだったか」判断に迷うことがよくあります。


付箋活用法

この問題を解決するシンプルかつ効果的な方法が、色違いの付箋の活用です。物件ごとに異なる色の付箋を用意し、撮影する際に目立つ場所に貼っておきます。例えば:

 

・A物件:黄色の付箋

・B物件:ピンクの付箋

・C物件:青色の付箋

 

写真を撮る際には、その色の付箋が必ず写真の一部に映るようにします。こうすることで、後から写真を整理する際に、付箋の色を目印にして素早く物件ごとに分類することができます。

また、付箋には物件名や住所の一部を書いておくと、さらに確実な識別が可能になります。内見後に物件を比較検討する際、この小さな工夫が大きな時間節約につながります。


『内見』のコツ3:詳細なメモで重要情報を確実に記録する


内見で感じた印象や気づいた点は、物件購入の最終判断において非常に重要な情報となります。しかし、複数の物件を見て回ると、時間の経過とともに具体的な記憶が曖昧になってしまうものです。そのため、内見中にしっかりとメモを取ることが非常に重要です。


効果的なメモの取り方

おすすめは、不動産会社から提供される販売図面に直接書き込んでいく方法です。間取り図とセットで情報を記録することで、後で見返した際に状況を具体的に思い出しやすくなります。

記録すべき重要ポイント:

 

・各部屋の日当たり具合と風通し

・気になった傷や汚れの場所

・収納スペースの使い勝手

・水回りの状態(水圧、排水の速さなど)

・床の沈みや傾きが感じられる場所

・騒音の有無(外部からの音、室内の防音性)

・匂いの気になる箇所

・給湯器やエアコンなどの設備の状態と製造年

 

不動産会社が用意する販売図面には十分な余白がない場合もあるため、赤や青などの黒以外のペンを準備しておくと、既存の情報と自分のメモを区別しやすくなります。また、クリップボードやバインダーを持参すると、立ったままでもスムーズにメモを取ることができます。

事前に担当者へ、余白のある図面やメモ用紙、バインダーなどを用意してもらえるよう依頼しておくのも効果的です。担当者によっては、内見用のチェックシートを準備してくれることもあります。


メモの活用方法

せっかく詳細なメモを取っても、後で見返さなければ意味がありません。「この物件を購入しよう」と最終判断する前に、必ず内見時のメモを再確認し、以下のポイントを整理しましょう:

 

・追加でチェックすべき点はないか

・不動産会社に確認・問い合わせるべき事項

・物件の良い点・気になる点のバランス

・自分のライフスタイルとの相性

 

複数の物件を比較検討する際には、これらのメモを一覧表にまとめると、より客観的な判断ができるようになります。


『内見』のコツ4:中古戸建ての内見はスリッパを履かず床の状態を確認


内見時には通常、物件内でスリッパが用意されていることが多いですが、特に中古戸建ての場合は、可能であればスリッパを履かずに靴下のままで内見することをお勧めします。


床の状態チェックの重要性

なぜスリッパを履かないほうが良いのでしょうか。それは、床の沈み具合や傾きは見た目だけでは判断できず、実際に足の裏で感じることで初めて正確に把握できるからです。特に水回りやキッチン周辺は木材の腐食が起きやすい場所なので、慎重にチェックする必要があります。

床の状態をチェックする際のポイント:

 

・歩いた時に「ギシギシ」と音がする箇所

・明らかに沈み込みを感じる部分

・床の傾きが感じられる場所

・冷たさや湿気を感じる箇所

 

床の沈みや違和感を感じた場所は、図面に具体的に印をつけておくと良いでしょう。後日インスペクション(建物状況調査)を依頼する場合には、これらの気になる箇所を建築士に伝えることで、より詳しく調査してもらうことができます。

床の沈みの原因の多くは、経年による木材の乾燥や収縮によるものですが、場合によっては水漏れによる木材の腐朽が原因となっていることもあります。見落とすと、購入後に大規模な修繕が必要になる可能性もあるため、特に注意が必要です。

また、冬場の内見では、床を通じて冷気がどの程度伝わってくるかを直接体感できるため、住んだ後の快適さや暖房効率を考える上でも参考になります。

なお、売主が現在も居住中の物件でスリッパなしの内見を希望する場合は、事前に不動産会社を通じて確認・了承を得るようにしましょう。売主によっては難色を示す場合もありますので、その際は無理に主張せず、他の方法で床の状態を確認することを検討してください。


『内見』のコツ5:周辺環境を実際に歩いて確認する


特に購入を前向きに検討している物件については、不動産会社の車で案内されるだけでなく、最寄り駅から実際に歩いて物件まで向かうことを強くお勧めします。


実際に歩くことで得られる情報

最寄り駅やバス停から物件までの道のりは、購入後の日常生活において毎日通ることになる重要な経路です。そのため、実際に歩いてみることで以下のような貴重な情報が得られます:

 

・駅やバス停からの正確な所要時間

・道路の状態(幅、歩道の有無、街灯の状況)

・上り坂や下り坂の有無と急さ

・周辺の店舗や施設(スーパー、コンビニ、飲食店、医療機関など)

・治安や街の雰囲気

・交通量や騒音レベル

・ゴミ集積所の場所と状態

・近隣住民の様子

 

内見の待ち合わせ時間より30分程度早く到着し、物件周辺を散策することで、より多くの情報を収集することができます。また、可能であれば平日と休日、または朝と夕方など、異なる時間帯に訪れることで、時間帯による環境の変化も把握できます。


ハザードマップと実地確認の組み合わせ

事前にハザードマップをチェックし、その情報を頭に入れた上で実際に周辺を歩くことで、より具体的なリスク評価が可能になります。例えば:

 

・浸水リスクがある地域では、実際の地形の高低差を確認

・避難場所や避難経路の確認

・土砂災害警戒区域に指定されている場合は、崖や斜面の状況を確認

 

GoogleマップやGoogleストリートビューでは地形や建物の配置は確認できますが、実際の高低差や匂い、騒音、地域の雰囲気などは、実際に訪れないと把握できない重要な情報です。特に長期間住むことになる不動産購入では、これらの情報が生活の質に大きく影響します。

気になる物件の内見を予約する際は、周辺環境の確認時間も含めたスケジュールを組むことをお勧めします。不動産会社の担当者に「駅から歩いて物件に向かいたい」と伝えれば、多くの場合、待ち合わせ場所を駅に設定してくれるでしょう。


まとめ:効果的な内見が成功する不動産購入への第一歩


物件の内見は、不動産購入プロセスの中でも特に「楽しい」ステップであると同時に、将来の生活の質を左右する重要な情報収集の機会です。本記事でご紹介したコツを実践し、事前の準備をしっかり行うことで、例えその物件を最終的に購入しなかったとしても、非常に価値のある経験となります。

 

<内見の効果を最大化するためのポイント>

・正確なサイズ感を把握する:メジャーを持参し、現在使用している家具のサイズを念頭に置きながら内見する

・効率的な記録方法を確立する:色違いの付箋を活用して写真管理を効率化し、詳細なメモを取る

・五感をフルに活用する:特に中古戸建ては床の状態を足の裏で確認し、匂いや音などもチェック

・周辺環境を実際に体験する:最寄り駅から歩き、異なる時間帯に訪れることで生活のしやすさを確認

・比較検討のための情報を整理する:内見後にメモを整理し、物件同士を客観的に比較できるようにする

 

複数の物件を内見していくと、徐々に物件を見る目が養われ、重要なポイントを効率よくチェックするコツが掴めてきます。そのため、気になる物件があれば、積極的に内見の機会を設けることをお勧めします。

最終的に、内見で得た情報と感覚は、あなたとご家族にとって最適な住まいを選ぶための貴重な判断材料となります。本記事の情報が、皆様の満足度の高い不動産購入の一助となれば幸いです。

 

法人営業部 犬木 裕