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不動産購入場所は本当にそこで良いですか?


不動産購入時に「コンパクトシティー」の考えを意識して欲しい!


 

現在、日本の住宅政策は人口減少下となり、都市の規模を縮めて行政の効率化などを図る「コンパクトシティー」(立地適正化計画)が広がろうとしています。

しかし、国内で成功例を築けていないのが現状のようです。

もしご興味のある方は国土交通省の「みんなで進める、コンパクトなまちづくり」というパンフレット、ならびに立地適正化計画作成の取り組み状況(下記)をご覧いただければ幸いです。

 

「みんなで進める、コンパクトなまちづくり」パンフレット

https://www.mlit.go.jp/common/001171816.pdf

 

立地適正化計画作成の取り組み状況

https://www.mlit.go.jp/en/toshi/city_plan/compactcity_network.html

 

ちなみにコンパクトシティの考えを阻む要因として、中心市街地の再整備と郊外の大規模開発を同時並行で進めるという矛盾が挙げられます。

背景には異なる担当部署(国土交通省と経済産業省)が別の未来像を描く「縦割り行政」があり、住民の意向とも向き合わないまま、まちの空洞化に歯止めがかからないようです。

 


人口減少率、高齢化率ともに全国トップの秋田市の現状について


人口減少率、高齢化率ともに全国トップを走る秋田県秋田市は中心街から5キロ離れると田んぼが広がり、人影がまばらな地区も多く存在します。

秋田市は5月、イオンタウン(千葉市)と協定を結び、東京ディズニーランドほどの土地に商業施設やスタジアムなどの開発を構想しているようです。

なんとその総事業費用は1000億円を超えているから凄い規模の開発となります。

しかし、イオンタウンが2015年に進出を表明した際は「コンパクトな市街地形成とは相いれない」と認められなかったようです。

今になって話が急浮上し、今度は開発しましょうとなっている事もビックリです。

もともと秋田市は2001年にコンパクトシティーをめざす都市計画を策定し、2008年から中心街のハード・ソフト事業に国費などを含め総額で約570億円を投じてきた経緯があり、近年は高層マンションも建ち、地価が上昇している為、今回の郊外開発構想の再検討に入っているようです。

 

しかし、これから不動産購入をされる際には、このような疑念を抱えるエリアでの住宅購入は注意が必要です。


秋田市に似た再開発構想は各地に見られる!


秋田市に似た再開発構想は各地に見られる、例えば茨城県取手市はJR取手駅前の再開発を検討する一方で、2キロ離れた田園地区で大型の商業開発を計画しています。

コンパクトなまちづくりを目指す長崎県諫早市も、経済活性化や雇用創出につながるとして郊外での商業開発を認めたようです。

背景に縦割り行政の壁があるようで、コンパクト化は国土交通省関連の業務を扱う部署が、郊外開発は経済産業省関連の部署が担当することが多い為、省をまたいで真逆の政策を進めているという背景があります。

人事交流も不十分で、足並みはそろっているとは言い難いのが実情です。


日本の「コンパクトシティー」の歴史とは


日本でコンパクトシティーの議論が始まったのは1990年代と言われています。

バブル崩壊後に中心市街地の衰退が進み、まず求心力を高める狙いで1998年に「中心市街地活性化法」が制定されました。

しかし、同年の「改正都市計画法」や2000年の「大規模小売店舗立地法」は結果的に郊外開発の規制緩和につながり、「コンパクトシティー」の逆の考え方が広がる形となっています。

 

国はその後、「まちづくり3法改正(都市計画法、大店立地法、中心市街地活性化法)」や「改正都市再生特別措置法」の施行で修正を図ったものの、中心部と郊外の綱引きは解消されていないようです。

コンパクト化が順調とされる富山市も中心部の人口減にブレーキはかかりましたが、商業機能は依然として郊外にあるようです。

多くの自治体の都市計画担当者は本音ではコンパクト化の実現可能性は低いと考えているようですが、そのような曖昧な政策で不動産を購入してしまうと、結果、売却もしにくい負の不動産となってしまう事が懸念されます。

また、道路や橋等のインフラに予算割けない自治体・エリアでは、土砂災害等のリスクも懸念されます。


今後の日本は「コンパクトシティー」を進めるべき


解決のヒントはコンパクト化で先行し、成功例とされるアメリカのポートランド市の事例が参考となるようです。

ポートランド市は都市境界線の外側について開発を厳しく規制し、2035年の完成をめざす中心部の長期都市計画は、延べ2000人以上の市民がワークショップに参加したようです。

市民を巻き込んだ政策で、活発な住民の声に多いようです。

市開発局と都市計画局が連携して「20分圏内で生活できる」まちづくりを進めています。

 

人口減少や高齢化などの社会課題が深刻な日本では都市のコンパクト化は避けて通れません。

一刻も早く行政の縦割りを解消し、住民と本音で対話をしながら政策を推し進める必要があると考えます。

アメリカのポートランド市の事例がどんどん日本中に広がり、「コンパクトシティー」を進める自治体が増える事を期待しております。

勿論、これから不動産購入をされる方は、負の不動産を所有する事が無いよう、ご注意下さい。今後の参考にお役立て下さい。

 

法人営業部 犬木 裕